9555人が本棚に入れています
本棚に追加
理子「あの~・・チェックイン・・」
冬美「あ、お客様でしたか・・!」
こんな周りに何も無い辺境の地で
従業員のお前が知らない人間なら、客に決まっているだろう・・と、言いたかった。
冬美「さ、こちらにどうぞ・・」
私たちは冬美さんに連れられ、旅館の玄関先へと向かった。
『小夜館』と書かれた看板が嫌でも目に入る。
この旅館の名前なのだろが、もう少しマシな名前は無かったのだろうか・・
館の名前がさらに不気味さを増している。
さらに玄関の扉には怪しいカラスをモチーフにしたオブジェが飾られ、
両脇には西洋の甲冑が置かれていた。
わざとか!? わざとホラーちっくにしてあるのか!?
こういうマニア趣向の旅館なのか!?
私はホラー映画に出てくるような怪しい洋館に戸惑いを覚えながらも、
館の扉は冬美さんによって開かれ、館の中へと渋々入っていった。
小夜館に一歩踏み入れると、どんよりとした重い空気が私にのしかかってきた。
何だ・・この感覚・・
マズイ・・何かとてつもなくヤバい気がする。
本当に呪われてるんじゃないのか?この館・・
玄関から入ってすぐに赤を基調にされた、大広間があった。
上を見上げるとマンガみたいに大きいシャンデリアがある。
落ちてきたら死ぬな・・
こんな館だけに、なぜか不吉なことを考えてしまう。
やがて、奥のカウンターから女性がこちらに気が付き、話しかけてくる
「あら?冬美ちゃん、そちら、お客さん?」
カウンターにいた女性は30は過ぎているだろうが、美人で黒いスーツを着ていた。
少し、か弱そうにも見えたが、服装と化粧のせいかキツくも見える。
館に似つかわしくない、キャリアウーマンスタイルの女性だった。
冬美「あ、由香オーナー!お客様です。」
由香と呼ばれた、その彼女はこの小夜館のオーナーであった・・
このホラーな館から、私はてっきり、
怪しい老婆か、ヘンテコな仮面をつけた男とかの色モノ的なヤツが
館の主人かと想像していたのだが、どうやら、普通のオーナーだった・・
私は少し残念に感じた自分自身にやるせない思いがした。
最初のコメントを投稿しよう!