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「…虎太郎、今度は何やったの?」
みんなの怯えたような視線を華麗にスルーして、隣の席の我妻 高志(あがつまたかし)は俺にそう尋ねた。
「心当たりが多すぎてわかんね。職員室行ってくる。」
でも俺は正直かつ、端的に答えてそのままそそくさと教室を出た。
あの怯えた視線の中に長居はしたくない。
向かうは鬼の待つ職員室。
辿り着いた先のことを考えると胃がずしりと重くなったが、その道すがらはなかなか快適なものだった。
なぜなら廊下にいる生徒たちのほとんどが俺を知っていて、俺が通るとさっと道を空けてくれるからだ。
少し寂しい気がしないこともないが、楽なことに変わりはないし、慣れてしまえば優越感も味わえる。
…俺だけか?
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