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黒ブチ眼鏡の、
ぼさぼさ髪の、
噂のあいつだった。
一ノ瀬零(いちのせれい)
「えっ」
向こうも私の声に反応して、声を出していた。
そして彼は本の山を抱え、机に向かい、私も面白がって彼の後ろについて机に向かうと隣に座った。
彼は本を目の前に広げ、静かに読み始めた。長い間、沈黙がつづく。噂通り無口なやつだ。
女の子にモテないのもわかる。
せっかく女の子がいるんだから、気をつかって話でもかけてよ、って思う。
そして私は長い沈黙にたえられなくて口を開いた。
「ねぇ、名前教えてよ」
名前は知っていたけど、自己紹介のようなものをかわしておかなきゃ、他人のままで終わってしまうし、なにしろ彼を名前で呼べないからだ。
すると彼は
「・・・知りたいの?」
と、人を馬鹿にしたように言った。
長い前髪をたらしたまま言う。
「知りたいから、聞いたんだよ」
そういうと奴は
「知りたいなら、自分で調べればいいじゃん」
そう言い放って、読んでいた本のページをめくった。
本を見るばかりで私の方へ顔を向けない。
ひねくれたやつ。
本能的に思った。
私、こいつ、嫌い。
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