黒キ者

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 「おい! そいつら一人も逃すなよ!!」    簡易的な鎧の様なモノを着た「男と思われる」者は怒鳴った。    「わかってる! お前こそ余所見してると…ほら見ろ言わんこっちゃない、逃がしたじゃねぇか」    近くに居た仲間が、襲われた家の人間が逃げたのを見て笑いながら言う。    「ふんっ、うるせぇ! どうせ逃げ切れねぇよ…ほらな」    逃げ出した人間…女性の向かった廊下先の曲がり角から、一人の大男…襲った団体の仲間が現われ、逃げ出そうとした女性の首を掴み持ち上げて元来た方向へ戻って行った…悲鳴とも絶叫とも付かない聲を挙げる女性を連れたまま…。    「へっ、たかが町長の家のくせに、こんな立派な家に住んでんのか、女中や召使までこんなに雇いやがって」    「まったくだな、良い御身分だぜ…まぁこんだけ居りゃぁ暫く食料には困んねぇから良いんだけどな」    そんな話をしながらさっきの二人は一階の広間に向かった。    「見ろよ! この屋敷だけにこんなに人間が居たぜ!!」    広間では4、5人の仲間が横たわった人間の山を囲んで騒いでいる。    「そんなに騒ぐな! とっとと持ち帰んぞ!!」    男の掛け声と共に騒ぎ声は止み、男達は各々山積みになった人間と縛られて動けずに震えている人間を持ち上げて屋敷を去ろうとした。    「へへっ、早く帰って新鮮な内に喰っ――…」    仲間に話掛けていた男の声がいきなり止まった…それと同時に話し掛けられていた男の頬に「ぴッ」と水の様なモノが飛んで来た。    「おいっ、どうした?」    話し掛けられていた男は話していた男に笑って聞きながら肩を軽く小突いた…その時…。    「ぇっ…? ぁ…ぅ…うぁあぁぁ~!!!!!!」    小突いた男は情けない声を挙げた…。    「なんだ!? どうした!?」    悲鳴を聞いた仲間が近寄って来た…そこには…。    「どうしたんだよこいつ…? なんで倒れてんだよ…? なんで…なんで…首が無ぇんだよ!?」    倒れた男には…首が無かった…元々無かったのではない…何者かに「斬り取られた」のだ…。
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