四面楚歌

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飛鳥は糸が切れたように倒れた。 周りは元の理事本部室。 静寂な暗がりの中で月和が言う。 月:「もう。後戻りは出来ぬぞ。そなたらは」 夢:「わかってます」 ユ:「学長。七老仙は今どこに?」 月:「では、くるのだ」 月和が差し出した手を握る俺たち。 グイッと引っ張られて、光の速さが如く。 景色を飛び越えて行く。 見えてきたのは、若菜の屋敷だ。 玄関ホールに着地すると。 光:「来ましたか…」 粟木光が出迎えてくる。 代議士でテレビによく出ていたので知っていた。 冴の父。 彼女に似て細身だった。 琢真:「仕留められたのですか?」 白衣に眼鏡が似合う佐藤琢真。 月:「すぐに救急車を大学に。飛鳥、本人は助かるはずだ」 琢真:「了解」 かおり:「司!理江子が召集してる」 ハイヒールの音が階段の上からした。 笹原かおりがこちらを見下ろす。 階段を上がり、談話室らしき。 ソファーのいくつかある部屋に入る。 腰をかけると柊さんと楸さんが、コーヒーを配ってくれた。 香りが部屋を包む中。 小賀さんにそっくりな中年で、引き締まった体格の男性が話す。 どこかで見た記憶がある。 義武:「その子らが希望か…」 月:「そうだ」 どうやら、小賀義武さんだ。 武道家でスポーツ番組にも出てた気がする。 だから、見覚えがあったのだ。 昔、小賀先輩たちとのコンサートにも来た事があった。 小賀先輩の父親だ。 賢治:「未来君たち以外には、もう…」 駒井沢賢治。 久しぶりにあった。 夢:「賢治さん。あの」 太一:「雅さんの話しは、上がって来てますよ。今更、傷を抉らんでも」 太った金持ちらしい男が、ドスドスやって来た。 周:「お父ちゃん!」 賢治:「いいんだ。太一。お気を使わずに」 周の父親に向かって言う、賢治さん。 ここに集うのが、裏の主権者たち。 確かにあらゆる分野を網羅する強者たちだ。 カツカツと理江子校長が、やって来た。 理:「行く末は、次世代に…。李ヨハンが暗殺され、メディアは麻痺してる。加えて、首相については今。帝位制が叫ばれつつあるわ。どうするの司」 元の司の姿に戻っていた月和が言う。 司:「もうすぐ…。9月…。秋が迫る。お彼岸が近い。神無月には、妖が暴走するだろう。この国は、それらを寄せ付け易い…」
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