7人が本棚に入れています
本棚に追加
/78ページ
飛鳥は糸が切れたように倒れた。
周りは元の理事本部室。
静寂な暗がりの中で月和が言う。
月:「もう。後戻りは出来ぬぞ。そなたらは」
夢:「わかってます」
ユ:「学長。七老仙は今どこに?」
月:「では、くるのだ」
月和が差し出した手を握る俺たち。
グイッと引っ張られて、光の速さが如く。
景色を飛び越えて行く。
見えてきたのは、若菜の屋敷だ。
玄関ホールに着地すると。
光:「来ましたか…」
粟木光が出迎えてくる。
代議士でテレビによく出ていたので知っていた。
冴の父。
彼女に似て細身だった。
琢真:「仕留められたのですか?」
白衣に眼鏡が似合う佐藤琢真。
月:「すぐに救急車を大学に。飛鳥、本人は助かるはずだ」
琢真:「了解」
かおり:「司!理江子が召集してる」
ハイヒールの音が階段の上からした。
笹原かおりがこちらを見下ろす。
階段を上がり、談話室らしき。
ソファーのいくつかある部屋に入る。
腰をかけると柊さんと楸さんが、コーヒーを配ってくれた。
香りが部屋を包む中。
小賀さんにそっくりな中年で、引き締まった体格の男性が話す。
どこかで見た記憶がある。
義武:「その子らが希望か…」
月:「そうだ」
どうやら、小賀義武さんだ。
武道家でスポーツ番組にも出てた気がする。
だから、見覚えがあったのだ。
昔、小賀先輩たちとのコンサートにも来た事があった。
小賀先輩の父親だ。
賢治:「未来君たち以外には、もう…」
駒井沢賢治。
久しぶりにあった。
夢:「賢治さん。あの」
太一:「雅さんの話しは、上がって来てますよ。今更、傷を抉らんでも」
太った金持ちらしい男が、ドスドスやって来た。
周:「お父ちゃん!」
賢治:「いいんだ。太一。お気を使わずに」
周の父親に向かって言う、賢治さん。
ここに集うのが、裏の主権者たち。
確かにあらゆる分野を網羅する強者たちだ。
カツカツと理江子校長が、やって来た。
理:「行く末は、次世代に…。李ヨハンが暗殺され、メディアは麻痺してる。加えて、首相については今。帝位制が叫ばれつつあるわ。どうするの司」
元の司の姿に戻っていた月和が言う。
司:「もうすぐ…。9月…。秋が迫る。お彼岸が近い。神無月には、妖が暴走するだろう。この国は、それらを寄せ付け易い…」
最初のコメントを投稿しよう!