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>煉獄の炎の中で、どこからともなく「敦盛」の謡が聞こえて来た。
低く響くその声が、ヤマトは好きだった。
迷いのない、ただ遥か一点を見つめているような。
揺るぎない眼差しと、声。
あぁ。
―――だからか。
だから、俺はこの人についてきたのだ。
この人が、何かを成し遂げるのを、見たかった。
歴史を曲げてでも。
本当に―――見たかったのだ。
流れ出るのは、涙なのだろうか?
見えているもの全てが潤みぼやけ始めた。
あの人の最期を見届けるのが、ふいに怖くなって俯いたヤマトを、抱き締める腕の体温だけが、やけに温かかった…。
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