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多紀とヤマトの現在の事実上の保護者たる『彼』の、多紀たちに対する要求は、“彼の元へと顔を見せに来る”コトであった。
保護者と言っても、『彼』はまだ若い。
実年齢はヤマトたちも知らない。
プライベート的なコトは一切立ち入り罷りならん、とのスタンスであるからだ。
外見は二十代前半に見える。
『彼』が多紀とヤマトの保護者となってから、十年の歳月は有に過ぎているが、余り外見に変化は見られない。
多紀が『バケモノ』だの『魔王』だのと呼び慣わすのは、その辺りめ由縁の一つだ
多紀・ヤマト以外の者が立ち入りることは許されておらぬ『彼』の書斎へと向かい、多紀は乱暴にドアを開けた。
部屋は遮光カーテンが引かれ、モニターや数々の端末の仄かな灯りで、僅かに薄暗く光っていた。
(相変わらず、シンキくせー部屋)
多紀は心の中で毒づいた。
出来れば余り長く居ようとは思えないシンキ臭い部屋に、正直多紀は率先して入ろうとは思わない。
「待ってたヨ~」
その端正な容姿からは想像もつかない、緊張感のないセリフが、形良い唇から漏れる。
知らない人が聞いたら、その余りのギャップに卒倒するかも知れない。
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