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私の祖父は私が小学三年生の時に亡くなった。
お通夜の日、仏間である一階の奥の和室に寝かされていた祖父の遺体を見ながら本当に死んでしまったのだろうかと実感も湧かぬままそっと触れた祖父の青白い手は冷たかった。
「おじいちゃん…?」小さく呼んでみたけれど、無論返事が返ってくる事など無い。動かなくなった祖父。
いつの間にか側に来ていた三つ下の従姉妹が不思議そうな顔をして私の服の裾を掴みながらちょこんと座っていた。
私が初めて「死」というものに対面した瞬間だった。
そして祖父が亡くなって初めての御盆がやってきた。
私は母と共に祖母しか居なくなった田舎に帰省していた。
伯母と三つ下の従姉妹も一緒だ。
その日は仏間である一階の奥の和室に祖母と私と従姉妹が眠り、母と伯母は二階で寝る事になった。床の間と仏壇に一番近い場所に私が寝、真ん中に従姉妹、その向こうに祖母が眠っていた。
夜中にふと目が覚めた。正確な時間はわからないが二時を過ぎた位だったと思う。
部屋の中は暗くはなかった。窓から入る月明かりが部屋の中を照らしていたから。
私は何気なく床の間に何かを感じて視線を向ける。床の間に白い着物を着た人が立っていてこちらを見ている。
不思議と怖さは無い。ふと反対側を見ると従姉妹も目を開けて床の間を見ていた。
白い着物を着た人は穏やかな顔をしてこちらを見ている。よく知っている顔。厳格で怒っている顔もよく見ていたけれど、静かに微笑む優しい祖父の顔。
『おじいちゃん…帰ってきたんだ…』
私は心の中でそう思った。
祖父は微笑んだまま白く細い煙のような姿になってスゥッと仏壇の中に入って行った。
従姉妹が私の名を呼んだ。私達は身を寄せて再び眠りについた。
私が初めて見た霊はおじいちゃん。勿論、全然怖さなど無かった。
ここから私の霊感少女だった頃の話が始まるけど、それはまた次のお話。
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