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夏が終わり、秋がゆっくりと近付く季節の狭間。
小さな森林に囲まれた、人気(ヒトケ)のない公園。
そこで一人、ボール遊びをしていた小学生になったばかりの女の子。
少女の前に、一人の少年が現れた。
少女と同じ年頃の少年。
少年はイチョウの葉を指し、少女に問う。
「何色?」
どの葉も、まだ紅葉などしていない。
少年が指したイチョウの葉も、まだ緑色のままだ。
「……?……みどり」
少女は少年を不思議に思いながらも答えた。
少年は楽しそうに、首を横に振った。
「ハズレ。黄色だよ」
少年が指を鳴らすと、イチョウの葉は、緑から黄色へと姿を変えた。
まるで、魔法のように……。
瞳を輝かせる少女を見ながら、少年はまた指を指した。
柔らかく微笑みながら、まだ緑色のモミジを……。
「何色?」
「赤!」
「正解」
パチンと、乾いた音。
瞬く間に、モミジは紅葉する。
少年は少女に色を問いながら、辺りを秋色に染めていく。
見渡す限り、秋の景色となった。
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