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嬉しそうに、楽しそうに笑う少女に、少年は問う。
「何色?」
少年が指すのは空。
少女が見上げた空には、一番星が輝き、オレンジ色の空は、紺色へと移り変わろうとしていた。
夜が訪れようとしていたのだ。
少女は元気良く答えた。
「黒!!」
「当たり」
少年は笑った。
凍てつくような、冷たい笑みで。
少女は息を飲み、動きを忘れた。
少年は指を鳴らす。
乾いた音が辺りに響き渡ると、空は一瞬にして黒へと変わる。
月や星の光のない闇。
草木さえない闇。
上も下もない、黒の空間。
それに溶けるように、少年も静かに消えた。
1枚の漆黒の羽根を残して……。
闇の中、少女と同じ人間だけが呑み込まれた。
光さえない闇の中に……。
人々は二度と光を見る事はなく、静かに死を迎えるしかないのだ……。
****
「何色?」
少年は歌うように呟いた。
人間のいなくなった世界、少女のいた公園の中で。
楽しそうに、嬉しそうに……。
少年の背中に生える翼と同じ、漆黒の羽根を見ながら。
「光も届かない、深い深い闇の色」
少年は羽根を手放した。
それは風に乗り、どこかへと飛んでいく。
少年は冷笑を浮かべた。
「黒」
【Fin】
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