何色

3/3
前へ
/21ページ
次へ
嬉しそうに、楽しそうに笑う少女に、少年は問う。 「何色?」 少年が指すのは空。 少女が見上げた空には、一番星が輝き、オレンジ色の空は、紺色へと移り変わろうとしていた。 夜が訪れようとしていたのだ。 少女は元気良く答えた。 「黒!!」 「当たり」 少年は笑った。 凍てつくような、冷たい笑みで。 少女は息を飲み、動きを忘れた。 少年は指を鳴らす。 乾いた音が辺りに響き渡ると、空は一瞬にして黒へと変わる。 月や星の光のない闇。 草木さえない闇。 上も下もない、黒の空間。 それに溶けるように、少年も静かに消えた。 1枚の漆黒の羽根を残して……。 闇の中、少女と同じ人間だけが呑み込まれた。 光さえない闇の中に……。 人々は二度と光を見る事はなく、静かに死を迎えるしかないのだ……。      **** 「何色?」 少年は歌うように呟いた。 人間のいなくなった世界、少女のいた公園の中で。 楽しそうに、嬉しそうに……。 少年の背中に生える翼と同じ、漆黒の羽根を見ながら。 「光も届かない、深い深い闇の色」 少年は羽根を手放した。 それは風に乗り、どこかへと飛んでいく。 少年は冷笑を浮かべた。 「黒」     【Fin】
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加