親友の証

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子供が一人草原に立っていた。 草原はすぐに崖になっており、国フリアートを見渡せる清々しいところだ。 子供はただただじっと国を見ていた。 フリアートは人口5千の小さな国だ。 この世界には沢山の国があり、沢山の国が領土争いをしている時代だった。 しかしその中でも、フリアートは小規模ながら平和な国であった。 国、首領を守る国守が大変優秀であり、皆武芸に長けていた。首領アザイは国守たちでは歯がたたないほど強く、子供たちの憧れでもあった。 そうして首領アザイを中心に国守がおり、幾度となく行われた領土争いにも勝利していた。 しかし、争いに勝利したとて、アザイは国を奪う事はなかった。 かくして、アザイを含むフリアートは隣接している国にも一目置かれ、そして慕われた。 フリアートの者たちもそれを誇りに思っていた。 子供はふとふりかえる。 子供が遠くで手をふっていた。 「アキラくん」 振り返った子供にそう呼びかけた。 「キヒラ」 手をふっていた子供の名前はキヒラ。アキラの友達である。「アキラくん、もう帰らないと、夕方だし暗くなると危ないよ」 キヒラは遠くから叫んだ。 「ああ、わかった。キヒラは帰るんだろ?俺も帰るよ」 そう言ってアキラはキヒラの元へ走って行った。 「アキラくんはこの場所好きよね。私は崖が怖くて覗けないわ」 「崖くらい平気さ。落ちたって飛べば大丈夫なんだから」 「飛ぶ?アキラくん変なこと言わないで人間は飛べないよ」 キヒラは笑った。 アキラは言った。 「キヒラは飛べないのか?」 そう言った瞬間アキラの背中が割れた。
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