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アキラの背中が割れた。
そして2つの黒いものが生えてきたのだ。
キヒラは唖然としていた。
大気の空気は肌寒い。その肌寒さからか、キヒラの腕には鳥肌がたっていた。
「アキ…ラくん?」ようやくキヒラから言葉が出た。
アキラの背中から生えたものはグングンと大きくなりやがては黒い蝙蝠の翼となった。
「ね?これならとべるだろ?」
アキラが言ったがキヒラは翼を見つめたまま口があいていた。
「キヒラ?どうしたの?」
「あ、アキラくん、人間には翼なんてないんだよ?アキラくんは何者なの?」
風船が割れたように目が覚めたキヒラは現実を受け止めてアキラに聞いた。
「俺普通のにんげんじゃないんだ。今は絶滅されたといわれている吸血鬼の末裔なんだ」
アキラは昔栄えた種族の吸血鬼の末裔なのだ。吸血鬼は強く血を欲することから人間に忌み嫌われ、そして人間の手で絶滅してしまった。
稀にアキラのように純吸血鬼ではないが吸血鬼の血を受け継ぎ翼をもつものがでてくる。
大抵はやはり忌み嫌われ殺されてしまう。
「アキラくん!翼!翼をはやくしまって!他の人にみられたらアキラくんが殺されちゃう!」
キヒラはアキラの翼を背中に入れようと押し込みはめた。
「はははははは。やっぱりキヒラは良い人間だな。翼を見せたのはキヒラがはじめてだ」
「だってアキラくんは悪い人ではないわ、アキラくんお願いだから翼をかくして!」
キヒラは必死だった。
「わかったからキヒラ。翼なおすから」笑いながらアキラが言った。
アキラの身長の倍あった翼がみるみるうちに小さくなり、やがては皮膚内に潜り込んでいった。
「よかった。誰にも見られてないよね?アキラくんの服の背中破れちゃったね。お願いだからアキラくん翼はもう見せないでね?」
キヒラは心からアキラの心配をした。
とても大切な友達だからだ。
「アキラくん、帰ろう?」
キヒラはアキラに手を差し伸べた。
「そうだな。帰ろうか」
アキラはキヒラの手をとり二人仲良く帰って行った。
二人が去ったあと、木の上から二人を見つめる者がいたことに二人は気づかなかった。
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