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さらさらと風に揺れる見事な金髪を邪魔臭そうに撫で付けると、フェルナンドは緑色の瞳を隣にいる青年へと据えた。
彼の横を何事もなかったかのように歩いている人物は、牢獄でディム・ロイドと名乗ったあの青年だった。
フェルナンドの意味深な視線に気付く素振りも見せずに、ディムは森の中を飄々と突き進んでいく。
「……なあ。なんとか抜け出せたのはいいけど、これからどうするんだ?」
痺れを切らしたフェルナンドが、とうとう堪りかねて口を切った。
「――あ? 何が?」
「何がって……城じゃ今頃大騒ぎだぞ?」
「おう。で?」
「……騒ぎが収まったらすぐに追っ手を送り込んでくるだろ。もっと急がないと危ないんじゃないのか?」
「あー、まあそうだな」
「あんた、やる気あんのか……?」
「おー、あるある。有余ってて困っちゃうくらいだよー」
「……」
一応真面目に話しているつもりのフェルナンドは、何なんだコイツ、と非難めいた視線を問題児に惜しみなく注いだ。
鼻歌混じりに歩いていたディムはフェルナンドの重苦しい視線と出会っても悪びれた様子も見せず、ただニッと笑ってみせた。
かと言って何か話すわけでもない。
何か考えがあってそうしているのとは訳が違うような気がする、とフェルナンドの勘がそう言っていた。
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