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「たとえお前が無実だったとしても国王陛下は助けちゃくれないぜ。死刑は確定、どんなお偉いさんでも死は免れねえ。特にこの国じゃあな」
「――やけに強く言い切るんだな。その根拠はどこにあるんだ?」
夢も希望もない冷めた言葉に怪訝な顔ですぐさま物申す。
だがディムは相変わらず涼しい顔で何事もなかったかのように歩き続けている。
隣の青年が何を考えているのか、フェルナンドには見当もつかない。
感情が読めない――それは出会い頭からずっと感じていたことだった。
ディムは常に飄々としていて掴み所がない。
一見、ガードのゆるいただのちゃらんぽらんのようにも思える。
だが、それでもよくよく見ると身のこなしから発言まで一部の隙も無いのだ。
加えてこの捉えがたい言動と表情。
まるで脇をすり抜けていく風のように軽薄で自由――それがフェルナンドの抱いた青年の印象だった。
「……王族が裁判にかけられるってことはだな、王子」
フェルナンドが押し黙っていると、一呼吸置いてディムが何か話し始めた。
突然のことに俯けていた顔を反射的に上げる。
「王族が裁かれる時は、どんな場合もそれ相応の理由があるもんなんだよ」
「――理由?」
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