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この瞬間、フェルナンドは全て思い出していた。 投獄される寸前に、いったい自分が何をしでかしたのかを。   * * * ちょうど今から二日前。 いつものように書斎へと向かっていたフェルナンドの背に、世話役のルーベンス・マネラが唐突に意味深な言葉を投げかけてきたのが事の始まりだった。 「坊ちゃま」 「ん? ――ああ、ルーベンスか」 老人の声に振り向いたフェルナンドは、見知った顔をその目に捉えると親しげに笑いかけた。 「こんな時間に会うなんて珍しいな。父上の側についていなくて平気なのか?」 フェルナンドの世話役だけでなく、国王の側近もこなす古顔の老人。 彼が様子見も兼ね、一日の予定を告げにフェルナンドの私室を訪れるのは、いつでも定時刻だった。 そんな多忙なはずの彼と時間外に、それも廊下で出会ったという事実にフェルナンドは驚いていた。
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