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「また書斎ですか。坊ちゃまは本当に書物がお好きなのですね」
だがルーベンスはそれには答えず、代わりにフェルナンドが手にした書物を見て言った。
退屈なこの城内で、読書だけがフェルナンドの唯一の娯楽だった。
そのため、気付けば今や書斎と私室とを行き来するのも、時間帯にばらつきがあるとは言え、ほぼ日課と化していた。
「まあね。あそこにいると時間が経つのが早いからさ。それに、今はこのくらいしかすることもないし」
言いながら頭の後ろで腕を組むと、ほんの少し不満の色を滲ませる。
そんな彼を見つめるルーベンスの目が、何かを捉えるように微かに細められた。
「……本当にそれだけですか?」
「――へ?」
フェルナンドが驚いたようにルーベンスを見た。
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