プロローグ―影―

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暗い部屋に一本の蝋燭を灯して、二つの影が揺らめいている。 「――いいよ。手伝ってあげても」 まだ幼さの残る少女の声が、背の高い影に向かって静かに言った。 逆光で顔は見えないが、体格から察するにどうやら相手は男性のようだ。 整った横顔。 蝋燭の光に照らされた髪は燃えるように赤い。 「……タダでやってくれるとは思えねえけどな」 皮肉まじりに答えた声は思いのほか若かった。 それもまだ青年くらいの、高過ぎず低過ぎない凛とした声。 少女はそれを聞くと、認めた証拠にクスッと笑った。 「わかってんじゃん」 どこか相手を見下したような響きを含んでいる。 だが青年は慣れているらしく、気にもせずに本題に入った。
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