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ただ黙り込み、思案するように眉を寄せていた。
すると突然。
「坊ちゃま、あまり真実を追い求めようとはなさらないことです。確かに、我々は知識欲には勝てぬ生き物……更なる真実を欲することは当然ではあります。……ですが」
ふとルーベンスは顔を上げ、フェルナンドの瞳を真っ直ぐに射抜いた。
「世の中には知るべきことと同じだけ、知らぬべき事実というものも存在するのです。これ以上書物に深入りし過ぎれば、もしかすると――後戻りできなくなるかもしれない」
沈黙を破ったルーベンスの口から出たのは、フェルナンドには全く理解できない言葉だった。
その言葉の意味するところを捉えかね、フェルナンドはただぽかんと口を開けたまま動けずにいた。
だがそれでも、意味深長な文の連なり――それがフェルナンドに向けられたものではなく、老人自身に対するものであることだけは朧気ながら理解できた。
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