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「――で、お望みは?」
「ん? うーん、そうだなあ……」
少女はここへ来て初めて考え込むような素振りを見せた。
青年は埃まみれの壁にもたれてじっと返事を待っている。
少女の淡い金髪が隙間風に揺れると、蝋燭の火に照らし出されてキラキラと輝いた。
少女が決心したように口を開いたのは、それから少ししてからだった。
「よし。じゃあ、この復讐が終わったらあたしたちの組織に入ってよ」
「――組織?」
「そ。しかも特殊部隊行き。君、馬鹿ぶってるだけで案外賢いからね」
特殊部隊、と小さく繰り返した青年に、少女は慌てて付け加える。
「特殊部隊ったって、別に変な仕事させるわけじゃないからね。危なくもないし。要は選ばれた人だけが入れる、あたしの『私事』担当の特別な部隊ってこと」
「私事、ねえ……」
ろくなもんじゃないとでも言いたげな声が返される。
だが、青年はとうとう意を決したように口を開く。
「わかった。やってやるよ。その代わり――」
「わかってる」
そう言って少女は真面目な顔つきで青年に何事かを耳打ちすると、静かに部屋を後にした。
後に残されたのは、何かを決した一本の長い影だけだった。
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