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「――なあ。お前、俺と一緒に来ないか?」
耳を劈くような轟音と共に現れ、静かにそう言った長身の青年。
彼の深緑の瞳は、悪戯を企む子供のように輝いていた。
その一風変わった瞳の色とは裏腹に、肩の辺りまで伸びた髪は燃え盛る炎のように赤い。
切れ長の目、通った鼻筋、そして彼の醸し出す野性味溢れた独特の雰囲気は、見る者に遠く離れた異国の地を彷彿とさせる。
目に染みるような鮮やかな色彩を獄中に放ちながら、異郷の青年は形のいい唇をわずかに歪めると、目の前の人物に向かって誘うようにゆっくりと手を差し伸べた。
青年が見つめる先には、ここの囚人と思しき若者が狐につままれたような顔で立ちすくんでいた。
見たところ十七、八歳くらいだろうか。
整った顔立ちに天使と見紛うばかりの見事な金髪、石膏のように白く肌理の細かい肌――そして何より彼が身に纏う高貴な雰囲気は、この薄汚れた牢獄には不釣り合いだった。
暗い監獄のなかでも自然と目に立つ混じり気のない金色は、当然彼の髪だけではなく、手入れの行き届いた優雅な眉も同じだった。
だが、今はその美しい金の眉も、驚きの形にひそめられている。
そんな彼の心中を察したのか、ふと青年の魔性を秘めた瞳が意味ありげに細まった。
まるで品定めでもするかのように注がれる視線。
どことなく楽しげなその目は、新しい玩具を見つけた子供のそれに似ていた。
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