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それを知ってか知らずか、目の前の青年は相変わらず飄々とした態度を貫いている。
しかも、掴み所のない笑みを浮かべながら、悠長にひらひらと手まで振ってみせた。
「いやー悪い悪い、うっかりしてたわ。俺はディムだ。ディム・ロイド。よろしくな」
「……いや、俺は別に名前を聞いたわけじゃ」
「まあまあ、堅いことは気にすんなって。んなことよりちゃっちゃと決めちまってくれよ。別に俺はどっちでもいいんだぜ。信用しようがしまいが、結局決めるのはお前なんだからよ……」
と同時に、先程も感じた自分に対する興味を含んだ視線が、再びフェルナンドへと向けられる。
ディムと名乗った目の前の青年は、恐らく自分ではなく、自分が下す決断の方に興味があるのだろう。
そう思うと、なんとなくいたたまれない気持ちになって居心地が悪い。
「――……」
質問に答えあぐねているフェルナンドの緊張をほぐそうと、注いでいた視線をいくらかゆるめると、ディムはぽんぽんと彼の肩を叩いた。
「……ま、そんなに難しく考えんなって」
どうやら決断に迷っているせいで難しい顔をしているのだとでも思ったようだ。
単に居心地が悪かっただけなのだが、そんなフェルナンドの気持ちには気付くはずもなく、ディムは淡々と続ける。
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