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部屋で温かく甘ったるいココアを飲む二人。
二人の手はしっかりと握られていた。
「実は……まださわこに話してないことがあるんだ」
「なに?」
柏木はカップをテーブルに戻した。
ココアの湯気がふわっと昇っていった。
「写真、さわこの写真、コンクールに出しちゃった」
「うそでしょ?」
思わずココアを吹き出しそうになる佐和子。
「でも、駄目だった」
「あ……そっか」
佐和子は少しだけがっかりして小さく微笑んだ。
「だからまた、モデルやってくれない?これからもずっと」
「え?」
無理!絶対……
いや、大丈夫。
もう大丈夫。
「うん」
小さく頷く佐和子を見て、柏木は優しく微笑んだ。
「あっ!それともうひとつ!」
「なぁに?もう何を言われても驚かないよ」
にこっと笑った佐和子の耳元で柏木は小さく呟いた。
「…………」
佐和子は口を大きく開けたまま、声が出ないほど驚いた。
そして、顔を真っ赤にさせて、またボロボロと泣いた。
そんな佐和子を柏木はケラケラ笑いながらぎゅうっと抱き締めた。
佐和子は柏木の腕の中で、幸せの匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。
それは温かくて、甘ったるいココアのような……
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