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「シコンで結構です。」
ビビってるのがバレないよう、精一杯、虚勢を張る。
そんな俺の苦労を嘲笑うようにグランサンタは、独特の笑い声を上げる。
「ホゥホゥホゥ、そんな堅くしなさんな、どうじゃ?一服??」
グランサンタは、引き出しから煙草の箱を取り出し俺の前に置いた。
それを無言で受け取り、口に加えた時点で気がついた。
…火がない。
「あの…。」
「慌てなさんな。」
刹那。
グランサンタが指をパチンと鳴らした途端、口元に火花が走った。
「!!?」
「先人のサンタの知恵じゃよ。極寒の雪国では、マッチが湿って使えんじゃろ?」
…先程から疑っていたのだがこの目の前の爺は、某魔法学校の校長先生じゃねえだろな?
そんな疑問が浮かんだが煙草の煙を肺に入れた瞬間、どうでもよくなった。
「さて…本題じゃが…シコン、君は、第ニ飼育小屋のトナカイを傷つけたと報告を受けたのじゃが…。」
雰囲気が一瞬にして、変わる。
今度は、ピリッとした居心地の悪い空気だ。
「あのトナカイは、血統書付きのエリートトナカイなんじゃがの…。」
追い討ちのような言葉が耳に流れ込んでくる。
気持ちを落ち着かせる為にめいいっぱい肺に煙を入れた。
「…俺は、何もしてねえ。」
「ほ?」
「あの馬鹿トナカイが自分で突っ込んで角を折ったんだ!大体何だよ!!血統書付きって!?美味いんかい!?食ったら美味いんかいー!!?」
………。
…や、やっちまった。
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