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うぅ…。
気持ち悪りぃ。
俺は、現在、多分大海原を海賊のごとく進行している。
多分と言うのは、残念ながら絶景であろう海を眺めることが出来ない。
何故なら俺が乗っている船には、窓は、おろか電気すら付いていない。
オマケに見知らぬおっさんやらおばさんやらが六畳間ぐらいの小さな部屋に密集しているからである。
誰一人として口を開こうとせず、死んだ魚のような目をして身を屈めている。
よく見てみると大阪のアメリカ村に居そうな黒人の兄ちゃんや痩せぎすのアジア系の方までいる。
あ…。
売られるんだ…。
…俺。
自分の近い将来のことを考えると憂鬱になりそうだった。
「ねぇ…?」
柔らかな声に反応するとそこには、こんなむさ苦しい所には、似合わない一輪の花。
「あなた日本人?」
「そうだよ。あなたは?」
声の主は、暗闇でも光る白金の髪とスカイブルーの瞳を持っていた。
ヨーロッパの人かな?
「私は、フランス人なの…。」
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