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えーん…えーん…
誰も寄り付かぬ鬼ヶ山に子供の泣き声一つ
その子供を見つめる鬼が一人
さてさてどうしたものか
「えーん…えーん…」
黒髪の美しい幼子は一向に泣き止まぬ
木の上の鬼はほとほと困り果てていた
そもそもこの鬼に食われてしまえと、この幼子は捨てられた
しかし、鬼は人は食わぬ
心の優しい鬼なれば、怖がらせてしまうと姿も現せず困った困ったと頭を抱えた
「えーん…かあさま…かあさまぁ」
幼子は泣きながら山を歩く。むき出しの足は傷だらけになっていた
「あっ…!」
不意に幼子が足を滑らせた
山の斜面を転がり落ち、止まったころには動かなくなっていた
鬼は慌て駆け寄る
おそるおそる幼子を抱き上げるとまだ息がある
鬼は迷わず己の住みかに幼子を運んだ
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