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「ここは…」
全身の痛みに幼子は目を覚ます
身体を起こすと木でこしらえた寝具に寝かされていた
「起きたか、子供…」
低く、よく通る声に振り向くと鬼がいた
金色の髪に黒い着物をまとった鬼だった
額から鬼の象徴と言われる角が短く主張していた
幼子は震え出した
鬼はその様子に眉を寄せると奥へと消えた
幼子の震えは止まらない
鬼が戻ってくる。手に木の器を持っていた
「食え。安心しろ、毒なぞ入っておらぬ…」
怯える幼子に器を押しつけた
暖かい草粥であった
幼子の喉が鳴る
腹の減っていた幼子は我慢できずに粥を口に入れた。鬼の視線に耐えながら全て平らげた
「食ったら寝ろ。どのみちその足では歩けまい」
鬼は空の器を受け取り奥へとひきあげていった
幼子は打ち掛けを捲り足を見た
薬草が巻かれている足は血が滲んでいた。確かに歩けない
幼子は仕方なく眠りについた
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