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「お前ブスだから、こっちの汚い所そうじしろよ!」
掃除当番グループの班長、6歳の勇くんが投げ掛けたセリフは、6歳の真美には深く傷つくものだった……
この屈辱から12年…、
「君みたいな可愛い子と付き合えたら幸せだなぁ」
ほろ酔いの男性客の前で笑顔で接客する真美がいた。
「まみちゃん可愛いから、もう一本空けちゃおうかな?ボトル追加で!」
18歳の新人キャバクラ嬢、真美のあどけない笑顔に周囲からの期待が集まった。
全くの別人ように美しくなった真美は、昔の同級生と街ですれ違っても気付かれない。
「やだぁ、奥さんいるんでしょー?他の女、口説いちゃってーもぉ!」
「そんな目で見つめられたらさぁ、落ちない男はいないでしょう!それにしても綺麗な目だね~」
「ちょっとー、飲み過ぎじゃないんですかぁ?」
その夜は、その男性に言われた一言に真美は違和感を覚えた。
家に帰っても、男性客の見つめてくる目が脳裏から離れず怖かった。
(ヤバかった…目、誉められた時は一瞬焦った…)
若いうちに美容整形に手を出した真美は周囲にバレるのを非常に恐れていた。
何気ない客の一言を簡単に流せる程、真美は大人ではなかった。
(何の為に、昼を捨て、この世界へ来たんだろう。ここで失敗したらまずい…)
ゴシップ雑誌、ネット普及に合わせて、世の情報の速さがどれだけのものか、いつ自分へ批判の目が向けられるのか、見えない先の運命が恐ろしくて仕方なかった。
(真美は消えたんだ!生まれ変わった“まみ”が整形してたなんて噂が出回ったら、私生きていけない…昼には戻れないんだから)
有名人のゴシップ雑誌を広げ、整形前と思われる写真を見ながら心に誓った。
(この人達も、真美と同じなのかなぁ…沢山ブスって言われて来たし、辛い事にも堪えてきたのに…目をあんなに誉められる事が、こんなにも傷つくものだったなんて…)
部屋で一人、容姿を誉められる事が嬉しくないのは、自分が整形してしまった柵(しがらみ)であると感じ、切なくなっていた。
まだ18歳の真美…
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