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その日の朝は、他の組の先生と、さくら組の恐い先生が仲良く話していた。
いつもの様に無理矢理連れて来られた真美は小さな声で、
「先生、おはようございます…」と言った。
「真美ちゃん、おはようございます」
にっこりと微笑む先生2人。
その後だった。
真美がその場から立ち去った後、いつも優しい先生の会話が聞こえた。
「やっぱ今日もおばあちゃんに怒られたんだね。めちゃめちゃ泣いた後って顔してる!あれ、おばあちゃんも大変だね(笑)」
真美には、その声がしっかり届いていた。
同僚同士のたわいもない会話…そんな事、知っていた。
園児相手の仕事と違い、大人の裏表がある事に、4歳の真美は何となく理解していたが、そこまでストレートな発言を耳にするのは、非常に苦しかった。
(この先生達、私にはわからないと思ってるんだ)
真美の心は閉ざされた。
どんどん無口になる真美…
どんどん人間不信に陥る…
毎日が辛く、苦しい日々…
それでも体罰は止まない…
親にバレる顔は叩かない先生…足を腫れ上がる程、叩かれ、無理矢理腕を引っ張られ…
コンクリートの上を引きずられる…
膝や太ももに擦り傷を残し、家に帰る…
親達は、転んだんだろう…としか思わない…
そのまま一年が過ぎ、年長になった。
5歳の真美。
「みんな年長さんだから、年中さんと手を繋いで、外にお出かけしましょう」
年下の年中が転ばない様に、必ず手を繋ぐように指示された。
背丈の低い年下と手を繋ぐ。
並んで前の人から順番に繋いでいって、真美の隣にきた女の子。
「手、つなご」
「イヤ!!」
その子は真美の手を振り払い、そっぽを向いた。
(どうしよう…繋がないと先生に叩かれちゃうよ…)
真美は泣きそうな思いで、
「お願い…手、つなごうよ」
「イヤ!」
その子は顔をプクーっと膨らませて怒った顔をしている。真美は泣きそうになったが、ここでないたら、先生に言われる事はわかってる…
(真美ちゃん、年長さんにもなって泣いてるのぉ?恥ずかしいよぉ?)
真美はみんなに笑われるのをわかっていたから涙を堪えた。
「後ろのお姉ちゃんのが可愛いから、後ろのお姉ちゃんがいい!」
その子が言った。
真美は諦めずにもう一度言った。
「ねぇ、お願いだからー…」
「ヤダもん!
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