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それはある冬の日。俺と彼女はいつものように肩を並べて下校していた。
腕時計の時刻は既に夜の7時を指しており、当たり前のように辺りは真っ暗。
おまけに、ほんの僅かだが雪までちらついている。
俺たちは賑やかな大通りを会話もなく、ただ積もる雪を踏み分けながら歩いていた。
せっかくの冬休みも、こうして毎日夜遅くまで補講に赴いていると、無くてもいいような気さえしてくる。
「…じゃあ。また明日ね?」
いつもの別れ道に差し掛かり、彼女が俺の顔を見ながらそう言った。
俺は少々戸惑いながら、手に持ったボロいビニール傘を彼女に差し出した。
「…傘、無いんだろ?今日は寮まで送ってくよ。」
俺が繕った言葉でそう言うと、彼女は再び俺を見てにっこり微笑み、うん。と嬉しそうに頷いた。
女子寮は学校に近い場所にある。
俺たちは大通りから右に折れた道に曲がって再び歩き始めた。
この道は通りとは反対に真っ暗で、等間隔に並んだ街灯と、雲でぼやけた月明かりだけが雪のキャンパスを照らしていた。
彼女がいつも一人でこんな暗い道を帰っていると考えると少々胸が痛い。
「…雪止まないかな…。冷たいね。」
彼女が両手に息を吹きかけながらそう言った。
「…でも、だいぶ落ち着いたんじゃないか?」
俺はそう言いながら、ゆっくりと舞い落ちる粉雪に手を差し伸べた。
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