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「そうだな…。」
俺は白い息を吐きながら言うと、ふと林の奥を見渡した。
微かに明かりが見える。
「どうしたの?」
彼女が俺の顔を覗き込んでそう言う。
俺はその問いには答えずに目を凝らして明かりの光る場所を見つめた。
大きな木の下に二人の男女が肩を寄せ合い座っていた。
おそらく他校の生徒だろう。
俺はそのカップルの様子を見て、少しやりきれない気持ちになった。
「…もう帰ろうか。明日は早いから。」
俺はカップルから目をそらし、彼女より先にテントに向かって歩き始めた。
その後に彼女が続く。
何かがっかりしているように見えた。
こんなにいつも側にいるのに…俺は彼女の震える小さな手も握りしめることが出来ない。
そう思った時に初めて気付いたんだ…。
彼女が、自分にとってもっとも近く、もっとも掛け替えのない存在であることに…。
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