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俺はこみ上げていたものを爆発させた。
彼女を強く抱きしめ、泣いた。
きっと、ひどい顔をしているんだろうな…。
そんな俺を、彼女は優しく撫でてくれた。
「独りで抱え込まないで?独りじゃない。ここには私がいるんだよ?」
彼女が優しく俺に語りかける。
俺は彼女を抱きしめながら、月灯りを見て、無意識に空を見上げた。
そこには、先程の曇った寒空とは打って変わり、満点の星空が広がっていたのだ。
俺の視線に、彼女も空を見上げた。
「…オリオン座だ…。」
何百と輝く星々の中に、三点を中心に広がるオリオンを見て俺は絶句した。
以前に二人で見た三点だけの仮初めのオリオンとは違い、大空には巨大なオリオン座が広がっていたのだ
「…キレイ…。」
彼女もただ呆然とその星座を見上げていた。
「…星…なら。」
俺は彼女に向けてその四文字を放った。
彼女が俺を見る
「…雪はどこもかしこも降っているわけじゃない。でも、星なら夜になれば必ず見れる。空は一つに繋がっているんだ。」
彼女はそれを聞くと、満面の笑みを俺に向けて大きく頷いた。
俺たちは、またこの場所で二人で星をみることだけを約束し、いつもの帰りのように別れた。
俺は涙をこらえながら、積もった雪を踏み分けて道を進む。
ただ一つの空を見上げながら…
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