エレベーター

16/31
5374人が本棚に入れています
本棚に追加
/1381ページ
「どうする、階段にするか?」 「いや、エレベーターにしよう」 俺はもう一度下向き矢印のボタンを押そうとして、ハタと手を止めた。 矢印のボタンはランプがついたままだった。 「やっぱり故障じゃないか」 『この階に来て扉を開け』という命令を示すランプが点灯しているのに、箱が1階に止まったままなのだから。 俺は矢印ボタンを連打した。 たぶん機械が古くなって本体の反応が悪くなっているのだろう。 俺の連打が効いたのかようやく箱の現在位置は動き始め、俺たちの前で扉が開いた。 中には誰も乗っていない。 友人を促して乗り込む。 操作盤の1階のボタンを押してから、『閉』のボタンを押す。 すぅっと扉は閉まり、落ちていく感覚が始まる。
/1381ページ

最初のコメントを投稿しよう!