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顔を上げると、桜の木の前に彼女が立っていた。
「まだまだ拙いけど……待っていてくれてありがとう」
僕は彼女の元へ行き、抱き締めた。ずっと待っていた、大好きな貴方を。
「去年、貴方が言っていた幻想を僕も見たよ。二人で見たかった……」
「私も……見たかったな」
奇跡は何度も起こらない。何度も起こったらそれは奇跡とは呼べないから。
今年はだから、貴方と一緒でも見られないかも知れない。でも大丈夫。
“花たちはまだ、咲き続けていたかったのかな”
そうかも知れない。それでも。
桜はまた咲くから。
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