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彼女と出会って一年が経とうとしていた。今年は桜が咲いている。 僕らは恋人になっていた。詩が書けなくても、僕は彼女から離れようとは思わなかった。だが彼女は寂しそうな顔をする。 「書けないならいっそ死んでしまいたいとすら思うんです。唯の趣味だったはずなのに」 「僕は、貴方の為に何が出来る?」 彼女は問いには答えなかった。代わりにこんなことを言った。 「貴方はどんな風に最期を迎えたいですか?」 「そんなの、考えたこともないよ」 「私は、好きな人と一緒に死にたいです。取り残されるのも相手を失うことも怖い」 「それは、僕を心中に誘っているの」 「不快に感じたらごめんなさい。否定したいけど、本心ではそう思っています。だから、私の傍には、いない方がいいんです。自分から告白したのにすみません」 彼女は本心を殺そうとしている。このままだと彼女はいなくなってしまう。そう思うと酷(ひど)く寂しくなった。 一過性の感情か、若(も)しくは血迷っているだけかも知れない。 それでも今、僕は彼女と死んでもいいと思った。 そんな考えが頭を過(よぎ)る。気が変わらないうちに、いっそ本当に心中してしまおうかという考えに支配されていく。
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