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その日は珍しく、朝から霧で白の世界だった
「嫌な霧だな」
「紅月は嫌い?」
「まぁな」
「私は幻想的で好き」
「そうか」
紅蝶の頭を撫でながら
霧を見つめていた
『あ~、この霧がわたあめだったらなぁ…』
何故か割り箸を持ちながら呟く
「翔様…そうやってまっていてもわたあめには
なりませんよ」
『ち、違うよ!これは、折れかけたアネモネの添え木に使う為!』
「そうでしたか…」
『いくら俺でも、霧とわたあめの見分けぐらいつくっての!』
「クスッ」
窓辺の鉢植えを持ち、
ソファーに座りながら、
紅月を見た
「どうした?」
『紅月は有能な先生だよね?』
「まぁ…」
『先生!では、お願いします』
そう言って、割り箸とアネモネを渡した
「えっ?」
『ほら、ここが折れかかってるだろ?まだ生きてるからなんとかして?』
「お前なぁ…」
苦笑しながら、アネモネを見つめる
そして、器用に割り箸をアネモネに添えて、包帯を巻いた
『包帯…』
「癖だ…お前達が怪我ばかりするから」
『あはは…なんかいいかも』
「花に包帯か…」
『こんなに可愛い花なのに、花言葉は可愛くない』
「ん?」
『だって…叶わぬ恋だよ?いやすぎ!』
「確かに…」
『ありがとね、あ~、
霧がわたあめだったらなぁ…』
まだそんな事を言いながら、キッチンに向かった
「確かに嫌な花言葉だな」
鉢植えを持ち、窓辺に
そっと起きながら、
深い霧を見つめていた
「霧も嫌だな…」
溜息をつきながら
いつまでも霧を見つめていた
こんなに今は幸せなのに、まだ俺は霧の中をさまようのか?
いや、さまよっているのは過去の自分
真っ白な世界でたった
一人の過去の俺自身…
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