優しさと苦しみと…

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『和海、あそこ』 「あれは…」 『俺、行ってくる』 「はい」 朝早く和海と海岸を散歩していた 『おはよう』 『?』 『あれ、忘れられてる?』 しばらく顔を見つめ… 『あっ…』 『思い出した?』 『うん』 『なっ、怪我してるじゃん!』 シャツに血が滲んでいた 『大丈夫』 『どうしたんだよ』 『これは…ううん… 俺の体の傷は俺自身の 戒め』 『お前…』 『自分を偽り、愛する人を苦しめた罰なんだ』 『やっぱりそうなったのか』 『えっ?』 『お前は前に来た時も 悩んでたよな…母親のうらみをはらすはずが兄である胡蝶を本気で愛してしまったから』 『それは…』 『でも、そのピアスに誓ったんだろ?』 『うん』 『お前は母親を選んだんだな』 『夢に毎日出て来るんだ…だから…』 『うん、誰もお前を責める事は出来ない』 『お前はまだ小さかったから勘違いしているんだよ』 『えっ?』 『階段から突き落としたのは本当に胡蝶だった?』 『物置に閉じ込められた理由はなにか考えた事がある?』 『それは…』 『お前は肝心な部分が抜けてしまってるみたいだね』 『えっ?』 『でも、それを話すのは俺じゃない』 『胡蝶?』 『うん』 『だけど…』 『自分自身を傷付けても胡蝶の傷は癒えないよ』 『わかってる』 『確かに普通では兄弟同士愛し合うなんて認められないけど…俺は、兄の胡蝶を一人の人間として愛した事は素敵な事だと思うよ』 『でも』 『まぁ、俺も感覚がおかしいのかもね』 『兄弟でも愛し合う事は可能だけど、それには それなりの覚悟もしないとね』 『うん』 『ゆっくり考えればいいさ…とにかく、手当てをしよう』 星羅の手を取り、店に向かう 笑顔の下に隠された辛い顔……翔には見えていた これから起きる事全てが… 見えていたから 無理して笑っていたんだ
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