月夜とピアスと…

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驚いたのは、セラの料理の腕だった 短時間で見事な料理を 作り出した 味もいい 『おいしい?』 「ああ」 『おいしい?』 「おいしいよ」 『よかったぁ~』 素直に喜ぶセラ 「もういいだろ?時間も遅いし帰れ」 『ダメだよ…だって、俺がいるって言っただろ?』 「えっ?」 『お願い…俺を胡蝶のところにおいて?料理でも掃除でも何でもするから』 「お前な…犬や猫とは 違うんだ…ダメだよ」 『お願い』 「ダメだ」 『どうしても?』 「どうしても」 セラはしばらく俯いて、 静かに立ち上がった 『わかった』 「ちゃんと家に帰れよ」 『家なんかないし…また誰かに拾ってもらう』 「は?まさかお前…いつもこうして?」 『いつもはお金をもらうよ…』 「それってまさか…」 『軽蔑した?でも、一人で生きていくには仕方がないんだ』 「バイトでもすればいいだろ」 『俺…視力が極度に悪いんだ…だからどこにも雇ってもらえない』 「え?」 『小さい時に怪我をしてからみたい』 「怪我…?」 『うん』 怪我… 嫌な事を思い出した 『じゃ、さよなら』 寂しそうに背中を向けて 玄関に向かう 「俺はピーマンとねぎが嫌いだからな」 『えっ?』 「あと、うなぎもだ」 『胡蝶…』 「寝相が悪いし、朝は 早い…ちゃんと起こせるか?」 『うん!起こせるよ… ピーマンもねぎも入れない』 「ほら、戻ってこい」 『胡蝶~』 「ちょ!抱き着くな!」 『ありがとう!』 「ただし…約束しろ」 『うん、何?』 「もう自分を安売りするな」 『胡蝶…うん、必ず約束を守るよ』 やれやれ… 俺とした事が… こうしてセラとの 生活が始まった
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