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「ただいま~!」
『まだ話し中だった?』
「いや、いいよ」
静流がグラスの水割りを飲み干し、言った
「じゃ、俺はこれで」
「いっ!」
星羅に足を蹴飛ばされる那智
「いっやぁ…何なら一緒に飲まない?」
「えっ?」
『那智が静流と一緒に飲みたいってさ』
「ちょ、星羅~、ホントの事言っちゃイヤン」
『きもっ!』
「お前なぁ…」
「ね?」
胡蝶は黙って見ていた
そして静流は言った
「だったら、二人きりになれるところにしない?」
「えっ…」
『どうするの?』
「でも…それは…」
「じゃ、他をあたるよ」
席を立ち上がる
「待てよ!」
「何?」
「二人きりになりたいんだろ?来いよ!」
「えっ?」
静流の腕を掴み
店から出て行った
『あらら』
「困った奴だな」
溜息をつきながら
テーブルの上に置いてある、小さなキャンドルを見つめていた
『胡蝶…』
「帰ろう」
『うん』
二人でどんな話をしたのかはわからないけど
まだ和解してないと言う事は胡蝶を見ればわかる
店を出て、手を繋いで
歩く
会話はない
「星羅…」
『ん?……んんっ…っ』
突然、抱きしめて
キスをした胡蝶
道の真ん中で通行人も
たくさんいるのにキスをする理由はひとつ
自分自身の気持ちを
確認したいから
静流に会って
心が流されてしまわないように
キスの温度で気持ちを
確かめる
『胡蝶…』
「大丈夫…愛してる」
『うん…愛してる』
不安はないけれど
胡蝶がまた静流に流されそうで怖かった
どんなに指を絡めても
手を放されそうで怖かった
不安はない
でも怖かったんだ
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