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何も無かった事にもホッとしたが胸の奥に針で刺されたような微かな痛みを覚えた。
意地悪されて、更に嘘を付かれたのに嫌いになれず、それ所か何処かで「何て意地悪な人だ」と小さく笑っている自分が居る気がした。
友也は俯き、琢磨の服を掴むと拗ねたように「許してやんない」と零す。
「本当に、ごめん....どうしたら許してくれる?」
「.....今度、美味しいハンバーグ作ってくれたら...考えてもいいよ」
返ってきた、上から目線の言葉に琢磨は嬉しそうに小さく笑みを零す。
おずおずと友也の髪を撫で、キュッと抱き締める。
「ありがとう...今度とびきり美味しいハンバーグ作るよ」
「許すとは言ってないからね」
「うん...ごめんね?」
鼓膜を擽る低い声に無言で返すと友也は、おずおずと体を離し、俯く。
「...琢磨さん....」
「何ですか?」
「キス...したのは何で...?」
恐る恐る問い掛け、見上げれば琢磨は目を丸くさせ心底、驚いたような顔をしていた。だが、すぐに優しく笑い「決まってるじゃないですか」と零す。
「友也くんが好きだからです」
「え.....?」
耳に届いた思ってもみなかった言葉に今度は友也が目を丸くさせる。
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