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「何だ...藪から棒に...」
「なぁ...嫌い?」
「嫌いなわけないだろ?いきなり、どうしたんだ」
訳が分からなくて聞き返せば友也は、ほんの少しだけ傷付いた表情を見せた。だが、すぐに小さく笑い「何でもない」と零す。
「何でもないって...友也?」
「本当に何でもないよ。ただ、聞きたかっただけ」
友也は、そう言うと仁の手を離し、席に着く。そして立ち尽くしている仁に「早く座って」と言うように自分の隣をバンバンと軽く叩いた。
仁は罪悪感のような胸の突っ掛かりを覚えながら静かに隣に腰を下ろす。
鞄からノートを出し、ポケットから携帯を取り出した時、友也が嬉々とした声を上げる。
「あーっ凄げぇカワイイー」
「え...?あぁ、コレか?」
仁は携帯に付いているドーナツのストラップを軽く持ち上げて見せた。すると友也は恐る恐る手を伸ばし、それをそっと掴み、ジッと食い入るように見る。
「カワイイー。いいなぁ」
「悪いがコレは、やれないぞ」
物欲しげな目で見上げてくる友也に仁は、にっこりと笑い、はっきりと拒否を表す。
誕生日に玲志から貰ったドーナツのストラップは大事な物で、仁は「誰にも、やらない」と声には出さず呟いた。
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