178人が本棚に入れています
本棚に追加
武蔵と柚琉は再び顔を見合わせ「何があったんだ?」とアイコンタクトを送り、首を傾げた。
視線を友也に戻せば、相変わらず泣き出しそうな顔をしていて、見ていると胸が苦しくなってくる。
どうして、そんな顔をするのか知りたくて遠慮気味に「仁と喧嘩でもしたか?」と問い掛ければ即座に「違う」と返ってきて、益々、理由が分からなくなった。だが、家に帰れば話してくれるだろうと思い、静かに口を閉ざすと武蔵は些か乱暴に友也の髪を撫でる。
「取り敢えず、俺の柚琉さんから離れてくれねぇ?」
「武蔵っ」
「友也には悪いが柚琉さんは俺だけのなの」
独占欲の塊とでも言うべき発言に柚琉だけじゃなく友也までもが頬を赤く染めた。
柚琉は力いっぱい、武蔵に左ストレートを入れると恥ずかしさと嬉しさの混じった顔で「馬鹿!」と声を上げる。
素晴らしい拳を受けた武蔵は「ぐはっ」と何とも男らしい声を上げ、その場に踞った。
友也は柚琉の袖に、しがみ付いたまま「ぅわぁ~」と零し「手厳しいんですね」と声を掛ける。
「いいんだよ!これ位....」
そう言って柚琉は、そっぽを向く。内心、悪いと思っていても、つい口より先に手が出てしまい何度、殴ったか数え切れなかった。
最初のコメントを投稿しよう!