秋の夜長に

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…………………… 「ライ―――――――!!!!」 愛しい彼の人は、腕の中で事切れた。 大事に、 大事にしていたのに…… 心の臓さえ破れていなければ“癒しの能力”で助けられた。 それが出来ぬ様に奴等は心の臓を狙った。 まだ温かい体を抱き締める。 命が消えたのに溢れる血…… 鉄のニオイに酔う様に、頭の芯がぐるぐると回っている。 ―――俺を、喰え――― それは、ライの願い…… 俺の、望み? 彼を、待ち続ける。 止まらない涙。 思考は、止まり、 歯をたてる。 赤い鬼。 全身が、血飛沫で赤く染まる――― 流れる涙さえ、赤く染めて…… 慟哭と、 怒りと、 獣に成り果てて、 吠える。 “朱色の鬼”を、 根絶やしにする。 ただ、 それだけを呪文の様に呟きながら、 怒れる赤鬼は、 殺戮を繰り返した…… 同族殺し。 そうして、 独りになる。 閉じた思考はそのままに、 狂わぬ様に、 彼の人の名だけをココロにとどめ、 眠りにつく。 彼の人を待ち、 何千年もの時を、 待ち続けた―――――          
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