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罪もない少女を犠牲にして、ほんの何十年かを永らえて一体何になるのか。
心のどこかで、そう叫ぶ自分がいた。
人類の命運などとうに潰えているのだ。
どうせそんな世界なら、せめて潔く、すべてのものに優しくあればいい。
だが、その声を押し止めるように、もう一人の自分が叫ぶ。
ここで諦めていい世界なら、どうして彼女は死んだのか。どんなに醜く穢れていても、生きることを諦めてはいけない。
どちらが正しいのか、10年考え続けても、ついにわからなかった。
─黒沢 祐一─
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