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「まあ、目が覚めて何よりだわ。
あと一週間したら退院できるらしいし、それまでにゆっくり思い出せばいいわね。
ね、司君」
「はい、そうですね」
司君とやらは軽くうなづいた。
その顔は微笑っているように見えたけど、なんだかちょっと複雑そうな感じだ。
やはり彼氏という立場の自分だけ忘れられて面白くないのかな。
「じゃあ、また明日来るからね」
え?
両親は私と彼を残して病室から出た。
普通こういうときは親がついててくれるもんじゃないの?
よほど信頼されてるんだ司君は。
記憶がない分、つい客観的に考えてしまう。
ぱっと自分の左薬指を見た。
「ははっ」
彼が笑った。
「俺達結婚はしてないよ」
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