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通路は暗く、前に進むのは困難であった。
「――ファイア」
辺りを照らそうと呪文を詠唱するが魔法が発動しない。
どうやらここは、沈黙珠(サイレンス・ボール)が埋め込まれた回廊らしく全ての魔法が制限されていた。
沈黙珠は主に囚人が監修されている牢獄などに用いられている。
犯罪者たちが魔法を使って、脱獄するのを防ぐためだ。
沈黙珠はとても高価な鉱物で並大抵の場所には使われない。
金と同等、もしくはそれ以上で取引されている代物だ。
そんな物が使われているというだけで、背中にゾクゾクとした感覚が走り、私の知的探求心が掻き立てられた。
禁書庫から漏れる光が頼りに通路を進む。
歩きにくいと思っていたのも、つかの間、その光さえ途絶えてしまった。
結界が自動修復してしまったのだ。
「どうしよう……」
それより絶望的なことは、魔法が使えない空間に取り残されたことだった。
その上、唯一とも思われる入口が結界によって塞がれてしまったのだ。
もう後戻りは出来ない。
何かの意志が、そのことを暗示しているようだった。
結果的に言えば、魔法が使えなく入口が塞がれてしまったことは良かった。
そして、私が物と対話する能力を持っていたということも不幸中の幸いだった。
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