忘れさられし世界

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人が通ると必ず、空気の中にいる風の精神たちが少し乱れる。 それを辿っていくのだ。 私は再度、精神を集中させて私の歩いた軌跡を辿った。 この方法は思いの外、上手くいった。 人の出入りがない禁書庫は、私が歩いた道しか空気の乱れはなく、すぐに出口へと誘ってくれた。 「あれ……?」 出口の扉を出ようとした時、私は異様な場所があることに気付いた。 出口とは真反対にある突き当たりの壁の辺り。 そこには、風の精霊すらいない空白の空間。 あのどこにでもいるハズの気分屋の精霊がいないのだ。 私は、その場所を不思議に思ったが、とりあえず部屋に戻ることにした。 禁書庫を出ると、一時間目の終了を告げる鐘が鳴り響いた。 人の往来が激しくなり軌跡を辿るのが難しくなったとしても、この禁書庫さえ出ればどうにかなる。 図書館から寮までの道のりは、毎日私が通っている通学路なのだから。
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