第一章 ~輪転~

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 ……たまに喧嘩もするが、それだって仲が良いからこその喧嘩だ。  かく言う――現在の喧嘩とて、保って2~3日だろうと理央は思っていた。  喧嘩を売った張本人が……である。  つまる所、理央にとっても、現況はちょっとしたハプニング程度の物に過ぎなかった。  強いて言うのなら、明文がどんな方法で謝りに来るかで、思考を張り巡らしていた程。  大方の予測通り、明文は自宅へとすぐにやって来て、素早く謝って見せた。  普段は、まるで優柔不断の教科書の様な遅鈍振りを見せる明文だが、理央の事になると俊敏だ。  行動も迅速で、ケアに対する努力も怠らない。  ……ここに理央は愛情を感じる。
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