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少女は最大の近距離での発砲を意とも簡単にスイスイと避けるブラッドの姿を見ていたのだから、不思議に思うのは当然の事だった。
「傷薬と包帯…
すぐに用意するわね」
少女は一瞬、申し訳なさそうにブラッドの痛々しい姿に目をやった。
(ブラッドはきっと……お姉ちゃんを…)
少女は小さな戸棚から、救急箱を取り出すとリビングのテーブルの上に置いた。
「ブラッドの治療をさせて下さい…」
「あぁ…頼む」
レイヴァンは苦しそうに呼吸をするブラッドを少女に受け渡した。
少女はブラッドを受け取ると、テーブルの上に寝かせブラッドに両手を翳した。
「ブラッド……もう少し我慢してね?」
少女はブラッドの位置をもう一度確認した後、目を瞑り詠唱を始めた。
「飛び散る花弁 陽より降り注ぐ数千の光 進めば共鳴 引けば拒絶
療法の三 臓腑回帰」
少女の手から暖かい光が穏やかに放たれていて、苦しそうな表情だったブラッドが徐々に落ち着いた表情になっていった…
「女……今のは?」
少女はゆっくりとレイヴァンの方を向いた。
「ウェンハム家に少し昔から代々伝えられてきた『内臓の損傷縫合修復魔術』です」
少女は穏やかな口調で言った。
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