330人が本棚に入れています
本棚に追加
1932年 昭和7年
賄いのおばちゃんである、伊澤さんが作ってくれた、雑煮をたらふく食べた後、白石が傍ら座り、「平成時代には何時戻れるんでしょう」と、話し架けてきた。
「何時、戻れるかは、判らないよ。」
「歴史変えちゃっていいんですか?」
「変える何も、我々が此処に居ることで変わってる、そう思わないか?」
「・・・・・」
「深く考えるのは、止めておけ、突然来たように、突然帰ってるかもしれない」
「はい・・」
正月そうそう、重い話しだが、此ばっかりは仕方ない。
翌日早朝に、山本少将から電話がきた、米内中将が帰って居るから引き合せてくれると、言うのだ。
早速、落ち込んでいる、白石を連れて出掛けた。
「はじめまして、高橋です。こちらは、白石です」
「はじめまして白石です」
「米内だ、よろしく頼む」
「正月そうそうで、なんだが」山本少将が行きなり、本題に入った。「君たちには、経験というか、歴史を知ってる訳だ。そこで」
一度言葉を切り、思案解にしている。
白石を見ると、怪訝そうな顔だ。
「そこでだ、君たちに頼みたいことがある」きた!避けて通れない道だ。
山本少将が続ける。
「軍の近代化に手を貸してくれ」
「いいと思いますよ」あっさりと、白石が答えた。
「もう、研究者の方は始まってますし、ねぇ高橋さん」
私は頷くだけだ。
「国力が上がれば、国民の意識も変わるし、戦争も回避出来るかもしれない」
白石が、一気に巻くし立てた。
一瞬米内中将の眼が光った。
「先ず、何から始めたらいいかね」
米内中将は口を開かない、口を開くのは山本少将だ。
「今すぐ出来ることは、ありません」
こちらも、口を開くのは白石はかりだ。
米内中将も山本少将も、鳩が豆鉄砲を喰らった顔をしている。
「今は、研究者の底上げの時期です。技術が上がれば生産力も上がります。軍の近代化はそれからです」
「技術力、生産力、それが上がるまで、待てということか」
「はい、今の日本の技術力では、何もできません」
「判った、今は待てということだな」
「一つあります」
「何だ?」
「教育です。資源の無い日本にとって、人が唯一の資源です。たから、命を大事にするように、命を粗末にしないよう、教育して下さい」
米内中将が初めて、口を開いた。
「遣らせて貰うよ、人の命、大事な資源と」帰り道「自分ばかりしゃべってすみません」「いや、いいんだ」
最初のコメントを投稿しよう!