プロローグ

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「おーい!行って来るよ」 「はーい、あなた。」妻から四人分の弁当を受け取りながら、 「帰りは来月になるのね」 「ああ、まる二週間に成るな。大丈夫だ、新装した箱根の研修所だから」 「でも、ちょっと寂しいなるわね」 「会長直々の御指名たから、嫌応もないよ」「あなたがなぜ?指名されたの」 「僕だけじゃないさ、ほかにも何人もいるよ」 「気を付けて行って」「じゃ、行って来るよ」 今日は陸上自衛隊恒例の総合火力演習の日である。自衛隊地域事務所の佐藤募集官から、駐車券付で四枚のチケットを頂いたのだ。総火演の人気もたいしたもので、なかなかチケットは手に入らない。早速、同期の課長三人に声を架けたら、行くと言う返事がきた。明日から、全国の課長級集めた研修会ひらかれる。それに会わせての総火演である。 「ウヒャー!たまんねーな、この衝撃」 「いつ浴びてもいいですね~」 「90式の120ミリすごいなぁ」 「AH1Sのあの低さ、あれサービスかな」 「本当、手が届きそうじゃないですか~?」「CH60Jのタッダウンは、迫力あるな」 「203もいい音だしてるよ、まったく」 あっというまの二時間だった。城西ホールディンクの四人は、思い思いの感想を口にしながら、見てきたばかりの総火演を振り返っていた。明日から二週間、箱根の研修所に缶詰の身分で、どんなプログラムが待っているのかを考えると先が思いやられる気分で、それを考えないようにしてある風である。 「おい、ちょっと足伸ばして、忍野八海でソバでも食べるか?」 「これから行っても時間持てあましますから、いいんじゃないですか」 「そうだな、いくか」 「ソバ、旨かったですね」 「これから行くと何時頃になるかな」 「6時に入れば夕食あるんだよな」 「ああ、そうだ」 「まぁ、急がず行くさ」 「おいおい、そうもいっていられないぞ。 見ろよ、あの入道雲」「真っ黒ですよ」 「こりゃ、一雨来そうだな」 「すごい雲ですね!こんなの見たことないですよ」 「一雨どころじゃないぞ。一嵐になるぞ」 前も見えない雨と雷のあと、これまた、前が見えないほどの霧に包まれ、往生しながらやっと6時前に研修所にたどり着いた。研修所には、この研修に参加する前泊者が六人来ていた。食事の面倒を見てくれるおばちゃんは、雨の前に帰ったらしい。また、土砂降りの雨と雷が成だした。
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